12章 回想[朝上家の不祥事]

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「……聞きたいこと?」  指を鳴らし、右手に一枚のトランプを召喚するグレード。 「瓜の守り人よ、なぜあなたは私の起こす奇跡に動じない? なぜ、そこまで心を閉ざす?」 「……ステージから私を見ていたんですか?」 「正確には見えてしまったのだ。白に紛れる黒……あなたはいつも暗い顔をしている」 「昔からこんな顔です。それに……皆が皆、マジックに心を動かされると思わない方がいいですよ」 「では、マジック以外にあなたの心を動かすものは何です?」  マスクをしているのにも関わらず、グレードの強い視線を感じる玄夢。 「……私がそれを言う義務あります?」 「やはりそう。瓜の守り人よ、あなたの心は酷く廃れている」 「廃れる?」 「感動とは心の余裕があってこそ初めて生まれるもの。あなたは日々、自分を殺し、心に重荷を背負わせている」 「……あなたに私の何が分かるんです……常に人々に注目され、賞賛されるあなたが……」  感情を押し込め、シダレヤナギから離れようとする玄夢。
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