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「事実、そうです。人は「危険」に感じるものほど強く心が揺さぶられる。「炎」を使った奇術は、まさしく人の心を動かすのにうってつけの要素だった……が、これはあなたに通用しない」
「その通り。次は口で弾丸を受け止めてみることね」
挑戦するように言い放つ玄夢。
「弾丸受け止めマジック――あれもかなり危険だが、所詮は弾丸のすり替えを行い、空砲を撃つだけのパフォーマンス」
「えっ、そうなんですか?」
「マジックの仕組みなど、知れば単純なものばかりだ。重要なのは、マジシャン自身がそのタネをどう彩るかだ」
そのとき、グレードの顔を照らすヘッドライト。
路肩に入ってくる一台の車。
「おっと、迎えが来たようだ。瓜の守り人よ、今宵はこれで失礼する。あなたを感動させる奇術……私自身の課題としよう」
シダレヤナギから離れ、車へと歩んでいくグレード。
玄夢は話し足りず、彼を追うように足を踏み出す。
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