12章 回想[朝上家の不祥事]

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「Mr.グレード、最後に一つだけ。先ほどあなたが口にした暗い時期……あなたはどうやってそこを抜け出した?」  ピタリと歩みを止めるグレード。  ゆっくり振り向き、天を指差した。 「私は出会ったのだ。天上に羽ばたく美しき「天使」と」 「天使……?」 「この世界は天使の劇場。そこに「孤独」はなかった」  彼の言葉の意味を全く理解できない玄夢。  しかし、当の本人はそれで満足したよう、「光」の中へと消えていったのであった。 10月21日(金) 22時30分  星石川(ほしいしがわ)駅。  藪柑子でのアルバイトを終え、帰宅ルートをたどる玄夢。      人目を避けるように裏通りへと入り、迎えに来たタクシーに静かに乗り込む。     「お勤めご苦労様です、玄夢様」  乗り込んだ先の後部座席で出会う一人の女性。      瓜守菊乃(うりもりきくの)」として変装した玄夢と全く同じ格好をした上に、その声、顔、体型までもが「朝上玄夢」と瓜二つな存在。    
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