12章 回想[朝上家の不祥事]

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夕ヶ丘(ゆうがおか)高校――それは、都心から西に離れた「夕ヶ丘」に敷地を持つ奥月(おくつき)運営のエリート高校。  グラウンド3つに体育館3つ、テニスコートに武道館などスポーツ施設が充実しているほか、実験棟や図書館、講堂や宿泊所など一般的な高校にないような施設も点在している。      そんな奥月ならではの(ぜい)を尽くしたような高校に通う第二学年――朝上玄夢(あさがみくろむ)。  彼女がたどる罪科の道は、ここより始まる。 10月21日(金) 12時  窓から吹き込む秋風。  暑くもなければ寒くもない、心地よい風が教室の中をなでていく。  閑散としていく教室の中、一人、机でうつ伏せになっている玄夢。  大地をイメージする深緑のスカートに、夕日を表現する茜色のブレザー。      新芽が天に背を伸ばすように、彼女の頭からはポニーテールが生えている。     「お~い、寝ているのか~、朝上」  ふと前方から聞こえてくる呼び掛け。
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