12章 回想[朝上家の不祥事]

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 玄夢は睡魔を押しのけ、ゆっくり(おもて)を上げた。 「よ、テストお疲れさま」  前の席からこちらに目を向けている肌黒の男子学生――朱松大弥(あかまつひろや)。 「お前、帰んねえのか? 今日は午前で終わりだぞ」 「……ん……」 「なんだ、眠いのか? お前ともあろう優等生が「一夜漬け」でもしたのか?」  視線をそらし、何も答えない玄夢。     「あっ、分かった。さては、昼食忘れたな? 仕方ねえ、「特大おにぎり」少し分けてやるよ」 「いらない」  大弥の善意を払い、スクールバッグに教材を入れ始める玄夢。 「なあ、テストの順位で勝負しようぜ。負けた方が「あんぱん」をおごる」 「……またか。私より上を相手した方がいいんじゃ?」 「確かに順位ではお前は10番くらいだが、上の連中は、ほら「これ」ばかりだ」  そう言って親指と人差し指で輪っかを作る大弥。
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