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玄夢は睡魔を押しのけ、ゆっくり面を上げた。
「よ、テストお疲れさま」
前の席からこちらに目を向けている肌黒の男子学生――朱松大弥。
「お前、帰んねえのか? 今日は午前で終わりだぞ」
「……ん……」
「なんだ、眠いのか? お前ともあろう優等生が「一夜漬け」でもしたのか?」
視線をそらし、何も答えない玄夢。
「あっ、分かった。さては、昼食忘れたな? 仕方ねえ、「特大おにぎり」少し分けてやるよ」
「いらない」
大弥の善意を払い、スクールバッグに教材を入れ始める玄夢。
「なあ、テストの順位で勝負しようぜ。負けた方が「あんぱん」をおごる」
「……またか。私より上を相手した方がいいんじゃ?」
「確かに順位ではお前は10番くらいだが、上の連中は、ほら「これ」ばかりだ」
そう言って親指と人差し指で輪っかを作る大弥。
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