12章 回想[朝上家の不祥事]

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「純粋な学力で言ったら、朝上の右に出るものはいねえと思ってる。それに、俺はお前からまだ一勝も取れてねえ。いつも惜しいところで負ける」 「ご愁傷さま」  興味なく席を立つ玄夢。  すると、タイミングを見計らってか2人の女子学生が近づいてくる。 「朝上さん、ちょっといいかしら?」 「……ん?」 「このあと、お時間はありまして? これから何人か誘って映画を見に行こうと思っているの」 「映画……」 「冴嶺木雲河(さえらぎうんが)様が初主演する映画だよ! 今日がその公開日なんだから!」  スマホ越しに、映画の広告を見せつけられる玄夢。  しかし、至って興味は湧かない。 「……ごめんなさい。今日は剣道の稽古があって」 「そう……ですか」 「残念だな~」 「なら俺が代わりに映画見てやるよ!」  気まずい間を取り持つように、割って入る大弥。 「はあ? なんであなたが」 「俺も雲河さんの演技には興味があるからな!」
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