12章 回想[朝上家の不祥事]

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「マジか! でも、高給だしアリか!」  会話を無視し、カタカタとキーボードを鳴らす玄夢。 「しかしあれだな。風鳥奇術団もまだまだ面白いマジシャンを隠しているな。俺、毎年ライブ放送される「奥月の式典」をよく見るけど、「Mr.グレード」なんて奴見たことなかったぞ」 「あれほどインパクトがあるマジックなら、お偉いさんも喜ぶだろうに。なんでやらないんだか不思議だ」 「……やらないんじゃない……やれないんです」  指を止め、無意識に言葉を差してしまう玄夢。 「え? 「やれない」ってどういう意味だよ、瓜守さん?」 「ご存じないですか? 奥月の式典は「火気厳禁」。ライターはおろか、タバコも持ち込むことができないのです」 「へえー、知らなかった! それじゃMr.グレード一生公演できないじゃん!」 「なるほどなー……っていうか、それを知っているということは、瓜守さんもちゃんとマジックショー見てるんじゃん」 「あっ、いえ……別にそういうわけでは……」
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