12章 回想[朝上家の不祥事]

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「このお店はお客さんもそうだけど、従業員も楽しく居られるような場所であって欲しいの。だから、悩みがあるなら言って。あたいがいつでも相談に乗ってあげる」 「……私なら大丈夫です。これでも楽しんでいます」 「本当に? 何か人間関係で嫌なことが――」 「大丈夫!」  はっきりと、大きな声でマスターの言葉を遮断する玄夢。 「……分かった」  マスターは折れたように目を閉じ、そのままスタッフルームを後にした。  部屋にただ一人残された玄夢。  突き付けられた「孤独」を紛らわすように、再びキーボードを鳴らすのであった。 10月21日(金) 21時30分  ホールでの仕事が一段落し、店の前にあるゴミ捨て場へと足を運ぶ玄夢。  手にしていた袋をネットの下に放り入れ、大きく一息つく。 「ふう……ん?」  ふと視界に入った「シダレヤナギ」――そこを居城としている黒き存在。     「……今日は大人しいのね……ナギ」
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