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1 夏休みの計画はお早めに
ルームメイトとしても恋人同士としても初めて迎える夏休みだから、一日位、一日でいいから、一緒に何処かへ出掛けたい!と可愛げがあることを言い出したのはモチロン、瀬田の方だった。
一方、秋川と言えばまるで、今年から初めて夏休みが導入されたかの様な忘れっぷりだった。
瀬田が尋ねる。
「帰省したりしないんですか?」
「わざわざ、電車が混んでる時に帰らなくてもなぁ・・・・どうせ歓待されるわけでもないし。おれの甥っ子になるんだけれど、姉の所の子供にウチの両親メロメロだから。初孫だから余計にかわいいんだろ」
「慎一さんって、お姉さんがいるんですね。他にきょうだいはいるんですか?」
「三才上の姉の他に、未だ高校生の妹がいる。男一人真ん中で挟まれて、昔から肩身が狭かった」
タジタジになっている秋川の姿が思い浮かんだのか、瀬田が思わず噴き出した。そんな瀬田へと、秋川が少しだけムッとして決め付ける。
「どうせ、おまえは一人っ子だろ?」
ワガママではないが、万事天然マイペースな所と、ミクリヤのオーナー夫人の伊智子の様な年上にやたらと可愛がられている所とから鑑みての全くの、秋川の偏見だった。
しかし、瀬田の返事は違った。
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