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経理部の眼鏡、までは判る。
実際に経理部で眼鏡を掛けているのは秋川一人だった。確かめたことはないが、コンタクトレンズ使用者はいるのかも知れない。
秋川自身はコンタクトレンズが合う合わない以前に、試したこともない。
眼鏡で特に不自由を感じていないので、中学時代からずっと眼鏡一筋?だった。
「慎一さんのあだ名です。デザイン部ではそう、呼ばれてますよ」
「王子って・・・・もしかして、男が少ない部署だからか?」
本気で首を傾げる秋川に瀬田も又、本気で呆れた。
「そんなわけないでしょう?慎一さん、鏡見たことないんですか?」
「な、何言ってんだよっっ!鏡見ないでどうやって毎朝、ヒゲ剃ってると思ってんだよ?それに、おれは王子って柄でも顔でもないよ」
おまえと違って。と言い掛けて秋川は止めた。
それは余りにも自虐的過ぎる。と思ったからだった。
会社の内外で秋川と瀬田とが連れ立っていると、大抵の女性は先ず瀬田を見る。
そしてそのまま、じいっとかチラチラかの違いこそあれ、ずっと、見続ける。
同じ年格好の男が二人並んでいたら、そりゃあ品定めもするだろうな。と秋川自身も思うので、瀬田を恨む気にはまるでなれない。
ひとえに瀬田の、自分の顔の良さをまるで鼻にかけない自然体なところに、助けられているのだと秋川は思う。
まぁ、瀬田本人はそこまで深くは考えていないだけなのかも知れないが。
イケメンは、イケメンであることが当たり前なのだから、あえて意識もしないのだろう。
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