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どちら様からの、いきなりのコレ呼ばわりかよ?コイツでもなくて。と思いながら秋川は自分をジロジロと、それこそ頭のてっぺんから足の先までねめ回している目黒を(逆に)見つめた。
年齢は三十代半ば、もしかすると四十周辺かも知れない。
今は接客業に有るまじき目付きの悪さだったが、中なかに苦み走ったいい男だった。
同じ酒関連の、バー『住のゑ』の笹のとはまた違った種類と方向性との渋さがあった。
白いシャツの左胸には金色のブドウの房のバッヂを着け、細く長い脚を黒いタブリエに包んでいたが、どちらかというと、頭にはねじり鉢巻きに無地のTシャツを着、足腰を覆うのは日本酒の銘柄が記されている前掛け。といった昔ながらの酒屋の店員スタイルの方がより似合う様に、秋川には思われた。
「何だか、薄ぼんやりしたヤツだなぁ・・・」
「癒し系でしょう?あ、それとダーリンじゃなくて、ハニーです」
「どっちでもいいわ!」
秋川自身としては、かなり不躾に目黒を見ていたつもりだったが、瀬田曰く、まとまり過ぎている顔が幸い?して、洟もひっかけてもらえなかった。
瀬田に対しては、ハニーでもダーリンでもないから!と言ってやりたい気持ちになったが代わりに、目黒に向かって、
「どうも初めまして。秋川慎一です」
と至極真っ当に、自己紹介をした。
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