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それにつけても瀬田は、この目黒という男に自分のことをどういう風に話したのだろうか?
今朝方の、おれの宝石発言から鑑みると知りたくはない秋川だった。
「これはこれは、ご丁寧な挨拶痛み入ります。『ワインの美作』の店主の目黒清茂です。ダーリンの瀬田さんには何時もいつも仰山買うて頂きまして、ほんまにおおきにですわぁ」
「・・・ご出身は関西ですか?」
「こんなインチキな関西弁があるか!出身は東京だ。三代前からの江戸っ子だっっ!」
「それはその、すみません」
だったら、そんなボケかますなよ!とは思いつつも、秋川は口では殊勝にも謝っておく。
対する瀬田は無邪気そのものだった。
「目黒さんって、江戸っ子なんですね。どうりでチャキチャキしていると思いました」
そんな瀬田へと向けられる目黒の目は、心なしか血走っている。
「晴季、夏休みって言ったよな?じゃあ、時間あるよな?ゆっくりじっくり話、聞かせてもらおうか?そこの、色男のハニーと一緒に」
おい!カズマっ!と、目黒はワイン棚の奥へと大声で呼び付けた。
ややあって、一人の青年が姿を現した。目黒と同じくソムリエの格好をしている。
「何ですか?目黒さん。あ、瀬田さん、いらっしゃいませ。今日はどの様なワインをお探しですか?」
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