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バックヤードにでも連れ込まれるかと思っていた秋川だったが、ワイン売り場の奥の一角にはカウンターが設えてあり、瀬田と共に脚の長い椅子へと腰掛けるように目黒に言われた。
「さて、洗いざらい話してもらおうか?舌を滑らかにする為に、ちょいといい酒を出してやらないこともない」
「目黒さんは、何時も此処で試飲をさせてくれるんですよ」
「ティスティングバーなのか?」
なるほど、瀬田にワインの知恵をつけたのはこの男か。と秋川は納得した。
「確か、晴季のハニーの好みは、白なら飽くまでもスッキリとした辛口。香りは華やかだが、けして甘ったるくない。赤は重厚かつスパイシーで、タンニンが多めのもの。だろう?こんな暑い日は先ずは白だな。リースリングだ。穏やかだがけして飲み飽きない。ドイツの白の代表する品種だ」
目黒は秋川と瀬田との前にそれぞれ、白ワインを指一本分程注いだグラスを置いた。
「タダで話を聞こうだなんて、野暮なことは言わないぜ。さあ、飲め!」
「・・・いただきます」
何やら、秋川が思い描くワインティスティングとは大分かけ離れていたが、素直に口を付ける。
柑橘系の酸味を感じた。
「美味しいです」
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