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その、判るヤツであろう目黒に問われて秋川は言葉に詰まる。
瀬田や水原、そして目黒の方が所謂、性的マイノリティに属しているはずなのに、その中では自分の方がアウェイというのは何とも皮肉な話だと、秋川は考える。
要するに視点が異なれば、見え方も又異なるという話なのだろう。
「目黒さん、それはその・・・・・」
瀬田は秋川を気にしつつ、目黒の質問責めを止めさせようとした。
何よりも秋川の為であったが、秋川の口からはハッキリと聞きたくない自分自身の為でもあった。
しかし、目黒には全く効き目がない。
「前から興味があったから、渡りに船ってわけでもなかったんだろう?」
「はい」
瀬田と付き合うまでは、同性に対して恋愛感情を抱いたことは一度もない秋川だったから、それは有り得ない。
実際に佐伯に告白された時は、少しもドキドキしなかった。気持ちが悪い!とまでも思わなかったが。
秋川は景気づけとばかりに、一口分のカオールを飲み干した。
力強いブドウの味がする。
「晴季の想いに応えたかった。それだけです」
「慎一さん・・・・・・」
後先を全く考えていなかった。とも言い換えられるが、秋川にそれしか考えさせなかった、瀬田の想い勝ちとも言えるだろう。
まぁ正直ここまでだとは、秋川も思っていなかった。
もしも事前に分かっていたのならば、少しはためらっていたかも知れない。
目黒は自分を見つめる秋川と、その秋川を見つめる瀬田とを見ていた。
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