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悪魔もとい目黒に促されるまま、唆されるままに、秋川はワインを口にするその前に、先ず鼻へと香りが飛び込んできた。
ブドウよりもいっそのこと、ブドウらしい匂いがした。しっかりとしつつ、滑らかなアルコールの味に秋川はウットリとする。
文字通り、陶然とした心地になった。
「気に入ってもらえたようだな。顔見りゃ判る」
「慎一さん!顔がエロいです!気を付けてください!」
「そうか?おれにはそうは見えんが。まぁ、シュミは人それぞれだからなぁ」
目黒は同情と言おうか疑いの感想を述べたが、瀬田との会話も含めて秋川の耳には一切入ってこなかった。
いい酒は耳をも酔わせてしまうらしい。
「とても美味しいです。目黒さん」
「世辞はいい。買ってくれれば言うことないんだが」
秋川は心の中では苦笑しつつも、それでも、この全くらしくないソムリエへと礼を言った。
「今までも、晴季にワインのアドバイスをしてくれてたんでしょう?おかげで何時も美味しいワインを飲むことが出来ました。ありがとうございます」
一瞬、呆気にとられた顔をした目黒だったが、直ぐに悪魔そのもののニヤニヤ笑いを浮かべて、
「その後は、あんたが晴季に美味しく頂かれているんだろう?違うか?」
とズバリと言った。
絶句する秋川から瀬田へと視線を滑らせて、目黒はつぶやく。
「おまえも、相当にえげつない性格してるな」
「ありがとうございます」
「いや、それって褒められてないから」
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