7 悪魔《ディアブロ》、登場

13/17
前へ
/100ページ
次へ
 悪魔もとい目黒に促されるまま、(そそのか)されるままに、秋川はワインを口にするその前に、先ず鼻へと香りが飛び込んできた。  ブドウよりもいっそのこと、ブドウらしい匂いがした。しっかりとしつつ、滑らかなアルコールの味に秋川はウットリとする。 文字通り、陶然とした心地になった。 「気に入ってもらえたようだな。顔見りゃ判る」 「慎一さん!顔がエロいです!気を付けてください!」 「そうか?おれにはそうは見えんが。まぁ、シュミは人それぞれだからなぁ」  目黒は同情と言おうか疑いの感想を述べたが、瀬田との会話も含めて秋川の耳には一切入ってこなかった。 いい酒は耳をも酔わせてしまうらしい。 「とても美味しいです。目黒さん」 「世辞はいい。買ってくれれば言うことないんだが」  秋川は心の中では苦笑しつつも、それでも、この全くらしくないソムリエへと礼を言った。 「今までも、晴季にワインのアドバイスをしてくれてたんでしょう?おかげで何時も美味しいワインを飲むことが出来ました。ありがとうございます」  一瞬、呆気にとられた顔をした目黒だったが、直ぐに悪魔そのもののニヤニヤ笑いを浮かべて、 「その後は、あんたが晴季に美味しく頂かれているんだろう?違うか?」 とズバリと言った。  絶句する秋川から瀬田へと視線を滑らせて、目黒はつぶやく。 「おまえも、相当にえげつない性格してるな」 「ありがとうございます」 「いや、それって褒められてないから」     
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

178人が本棚に入れています
本棚に追加