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一杯になったスタンプカード二冊分、つまり八千円分で、大まけにまけて手打ちにしてやる。という、秋川が思うソムリエとは似ても似つかない口調で目黒は宣言し、イタリアワインの王様を包み始めた。
口振りはだいぶアレだったが、ボトルを扱う目黒の手付きの確かさと素早さとは、さすがにプロのものだった。
「・・・ありがとうございます」
包みを受け取った秋川にではなく、目黒は瀬田に向かって言った。
「そう言えば『住のゑ』には顔を出しているのか?陸斗が寂しがってたぞ」
「昨夜、顔を出しましたよ。ゆっくりはしませんでしたけど。別の所でゆっくりしたんです。シャンパン飲みながら二人切りで。ね?慎一さん」
「は、晴季!?」
目黒が尋ねてもいないことを話し始める瀬田に、秋川はうろたえる。
「ほぅー、この間『住のゑ』からエライ高いシャンパーニュの注文が入って、しかもホテルに直接届けてくれときたもんだから、どんな上客用だよ?って思っていたらまさかの身内、おまえかい!」
「あれって、ここの商品だったんですか?」
驚く秋川へと、目黒は得意げに種明かしをした。
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