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向かい合わせの何時も席からそう言ってくる瀬田へと、秋川は右手を差し出した。
瀬田はそれを掴み、勢いよく秋川の隣へと腰を下す。
ソファーのスプリングが大きく弾んだが、瀬田が持っていたグラスの中身は幸運にもこぼれなかった。
瀬田が上体を秋川へと向けたので、文字通り膝を突き合わせる形となった。そんな瀬田の目を真っ直ぐと見て秋川は、今度こそはハッキリと言った。
「今度はおれが計画を立てるよ。何処に行きたい?未だ夏休み残ってるし」
「何処でもいいですよ。慎一さんと一緒なら」
瀬田は本気でそう思い、答えた。
そう、ただ一緒に居たい。一緒に居たらいたで、それ以上のことを求めてしまうのは瀬田自身にもよく分かっているのだが、一番にはそれだった。
そしてその時に、今この瞬間のように自分の隣で、秋川が笑ってくれているのならばもう何も言うことはない。と瀬田は思う。
昨夜の、追い詰められて余裕をなくしていた秋川の姿も、瀬田の体はもちろんのこと、目も十二分に歓しませたが、今、こうして手放しでリラックスしているのも又、瀬田を喜ばせる。
日差しにグラスをかざして見るその横顔は、まるでピンクサファイアの様なワインよりもキラキラと輝いて見えた。
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