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にこやかに毎朝同じことを言う宿屋の夫人に手を軽く振って挨拶をし、外へ出る。空は変わらずまだら色。じっと見ていたら気持ち悪くなってしまいそうだったので俺はそれから視線をずらして町へと向ける。大きな町だ。この世界の中心とも言われている大都市エヴァロン、石畳が敷かれて大きな建物が軒をつられている。宿屋の正面に冒険者がギルドとして、町の人が酒場として使用している場所がある。情報収集のために入ると店内は朝からがやがやと活気があった。
「やあマスター」
カウンターへ行き、緑のバンダナに白い口ひげを蓄えた恰幅のいい親父さんに声をかけた。
「勇者の坊主。どうした、朝から酒か?」
「んーそれもいいけどさ。情報が欲しくてさ」
「情報か?今のところこんなところだな」
親父さんは丸まった半用紙をカウンターのうえへ広げた。情報と、情報料が書かれている。俺はざっ止めを通す。強敵の噂、刀鍛冶の噂、闘技場の噂…等などが書かれているなか、二頁目の中腹あたりに求めていたものが書かれていた。改名屋の噂。これだ。情報料は三百G。物語終盤にとっては痛くも痒くも無い値段だ。
「改名屋について教えて欲しい」
300Gを渡す。
「ああ。アルダにいるらしい。なんでも入り組んだところにあるから見つけにくいって話だ。現地の冒険者なら知っているだろう。ギルドへ行って聞いてみるといい」
「ありがとう。そうするよ」
この世界の面倒なところは、こうして情報を聞かなければ発生しないイベントがあるということだ。名前を変えたいだけなのにステップを踏まなきゃならない。それに。
「アルダって言ったら、魔王軍に壊滅状態にさせられた町じゃないか」
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