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640年前の光
文化祭の準備は着々と進み、ナレーション原稿も順調にかたちになっていった。私たちは図書室ではなく、みんなが作業している教室で内容を詰めていった。
そしていよいよ、文化祭前日。クラス全員で居残りして、ドームを組みたて、教室に展示物を貼っていく。すべての作業を終えた時、もう外は暗くなっていた。
遅いから集団下校するように、という先生の指示があって、みんなと一緒に下校する。男子は男子で、女子は女子で固まって、遠足みたいにぞろぞろと歩いて帰った。
私は麻子たちとおしゃべりしながらも、羽村くんの背中をずっと見つめている。大きな背中を。
文化祭が終わってしまったら、彼とのかかわりも、なくなってしまうのかな。
頬を撫でていく風が、ひときわ冷たく感じる。思わずため息をこぼすと、麻子が、
「告りなよ」と、私の耳元でこっそりささやいた。
「え?」
こ、こくる?
「羽村だよ。最近、梨乃、羽村のことばっか見てるじゃん」
ずばりと麻子に指摘されて、私はぎくっと固まった。
「好きになっちゃったんでしょ?」
「えっ。ち、ちがうよ。ただ単に、ちょっと気になるっていうか、つい見ちゃうっていうか……」
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