無愛想な彼

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 気持ちがふわふわしていた。授業にも、ちっとも集中できない。  ぼうっとしている間に理科の授業は終わり、給食の時間も終わり、昼休みも終わってしまった。  チャイムが鳴る。5時間目は、文化祭の係り決めをする。 「じゃあ、希望の係のところに、自分のネームプレートを貼ってくださーい。多いところは、あとでジャンケンで決めまーす」  文化祭実行委員の多田くんが黒板の前に立って、仕切っている。 クラスの出し物はすでに決まっている。「プラネタリウム」だ。  みんなが、ぺたぺたとネームプレートを貼っていくなか、私はぐずぐずと迷っていた。  今、希望者がいないのは、ナレーション原稿作成、の係。天体や宇宙や星座の解説を考えるってことだよね。大変そうだけど、文章を書くのは得意なほうだし。原稿を作るだけで、自分で読まないでいいなら、これにしようかな。  えいっ、と。黒板に自分のプレートを貼る。と、ほぼ同じタイミングで、私のプレートの上に、「羽村」のネームプレートが貼られた。  えっ。羽村くんも、原稿係希望なの?  思わずふり返ると、私の真後ろに羽村くんがいて、ばっちり目が合ってしまった。 「……あ。あの」  かあっと、顔が熱くなった。何か言わなきゃと思うのに、何もことばが浮かばないよ。     
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