01 金色の瞳

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01 金色の瞳

 ――薬師の村・ビシャス 「ねぇ!お姉さん!  今日はどんな魔法を見せてくれるの?」  そう元気よく話しかけたのは、ハヤト。  銀髪で金色の瞳を持つ元気な4歳だ。 「そうねぇ。  今日は、エメラルドでも作ろうかしら?」 「エメラルド!!緑の石だよね!」 「そうよ。  ハヤトくんは物知りねぇー」  錬金術師の女は、そういって笑う。 「えへへー」 「これをこうして……」 「……ん?」  ハヤトが驚く。 「あ、失敗……」  錬金術師の女が、そう声を漏らした瞬間。  全てが赤い炎で包まれた。  燃えた炎は、全てを燃やし。  全てを赤いルビーへと変わった。  ハヤトが瞳を閉じた瞬間だった。  再び開けた時。  錬金術師の女が赤いルビーになっていた。  女だけじゃない。  本棚の本、そして机に壷がルビーになっている。 「お姉さん?」  ハヤトが首を傾げる。  左目から溢れるのは涙じゃなくルビー。 「……痛い」  流れるのは赤い赤いルビー。 「なんで、こんなことに?」  ハヤトが、そういって左目を押さえ外に出る。  その光景は、絶望。  なぜなら、そこは全てがルビーだったからだ。  部屋も錬金術師の女も木も家も犬も猫も鳥も植物も。     
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