108人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「そうですね…。これ以上は本人から聞いてください」
マスターはそう言って肩をすくめた。
「すみません。マスター…」
私は丁寧に頭を下げた。
「いえ。ではどうぞお帰りください」
マスターが、腕を伸ばして私達の後方を指し示した。
「じゃあ、マスター。おつりもらっていきます」
彼が、またクスクス笑って、私の手をグイと引いた。
「あ、あの…」
「ビール一杯二千円はないでしょ?さすがに…」
「いや、そうですけど…」
私が、抵抗していると、マスターが
「池ちゃん…従業員が営業妨害してどうするんですか?」
と、怒った口調で言った。
「そうそう。そういうこと!」
彼は、私の手を掴んだまま歩き出した。
「和さん!」
少し歩いたところで、マスターが彼を呼び止めた。
「池ちゃんを頼みます…」
そう言って頭を深々と下げた。
「ん…」
彼も同じように深く頭を下げたのを見て、私もつられて頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!