第3章

30/30
108人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「そうですね…。これ以上は本人から聞いてください」 マスターはそう言って肩をすくめた。 「すみません。マスター…」 私は丁寧に頭を下げた。 「いえ。ではどうぞお帰りください」 マスターが、腕を伸ばして私達の後方を指し示した。 「じゃあ、マスター。おつりもらっていきます」 彼が、またクスクス笑って、私の手をグイと引いた。 「あ、あの…」 「ビール一杯二千円はないでしょ?さすがに…」 「いや、そうですけど…」 私が、抵抗していると、マスターが 「池ちゃん…従業員が営業妨害してどうするんですか?」 と、怒った口調で言った。 「そうそう。そういうこと!」 彼は、私の手を掴んだまま歩き出した。 「和さん!」 少し歩いたところで、マスターが彼を呼び止めた。 「池ちゃんを頼みます…」 そう言って頭を深々と下げた。 「ん…」 彼も同じように深く頭を下げたのを見て、私もつられて頭を下げた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!