第4章

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「あの雨の日…。愛音が池ちゃんだって分かった時…。俺は全部思い出したんだ」 彼が、私を抱きしめたままゆっくりと話し始めた。 「思い出した?」 彼が何のことを言っているのか、まるで見当がつかなかった。 「俺は昔、常連になったバーのソムリエに恋をした。けど、俺はこんなだし…思われても迷惑だろうと思って、あえて何も告げなかったんだ…」 彼は…何を…。 「想いを告げて気まずくなるくらいなら、客として笑顔を見ていたほうがいい…。と思っていた。けど、その年のライブ終わりに店に行った時、酔いと興奮した勢いで…俺は、彼女に無理やりキスをしてしまった…」 彼の優しい声が耳元をくすぐる。 私の聞きたかった事を、まるで音楽を奏でるみたいに柔らかく。 「彼女はそりゃあ驚いた顔してさ…今にも泣きそうな顔して…。全力で拒否されたよ」 違う…。そうじゃない…。私は…。 彼が、少し驚いて顔を上げ、私の目から溢れている涙をそっと唇で掬い、優しく髪をなでた。
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