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「え?そう…ですか?」
私は驚いて掃除の手を止めた。
「君は瀬野から預かった大事な娘です。幸せになって欲しかった…」
「マスター…」
マスターの優しい言葉に思わず泣きそうになる。
「越くんは大丈夫ですよ。あの後話を聞いているうちに落ち着いてくれました」
透のことは気になっていたが、マスターから言われるまですっかり忘れていた。
「透なりに私を気遣ってくれていたんでしょうか?私を裏切ったという、後ろめたさが…」
「うーん…。どうですかねー。男はいざとなると度胸がなくなるんですよ。だらしない事に…」
「そうなんですか…」
あんなに友紀さんと一緒になりたいと思っていたはずなのに、いざ手に入るとなると迷うものなのだろうか…。
透がやり直そうと言ったのは、やはり一時の気の迷いなのだとしても、私が彼との事を打ち明ければ、透も前を向いて友紀さんと歩いていけるのではないか。…と思った。
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