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「透に、彼のことを話したほうがいいでしょうか…」
「それは、止めたほうがいいでしょうね」
マスターの表情が少し険しくなった。
「でも…私に負い目を感じているなら…」
「池ちゃん?」
いつになく厳しい表情でマスターが私を見た。
「男は、だらしないくせにいつでも優位に立っていたいんです。要するに子どもなんです、いくつになっても」
マスターは、そう言って肩をすくめた。
「そう…ですか…」
確かに今さら私も透と同罪なのだと打ち明けても、誰も幸せにはならないし、ただの自己満足に過ぎないのだと思う。
「結局、君への贖罪が越くんに前を向かせるんです。だから今は、君も自分の幸せを考えなさい」
マスターがグラスをクルクル回しながら、ほほ笑んだ。
私の幸せ…。
マスターが言ったその言葉に、私はまた胸が熱くなった。
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