第4章

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「さすがに、もうお客はいないね」 彼が、グラスに残ったビールを飲み干して言った。 「そうですね。平日だし…」 私は空になったグラスを片付け、二杯目のビールを入れようとした。 「あ!今日は…」 「え?もういいですか?」 「や…マスターは?」 私の質問には答えず、彼が聞いた。 「ああ、昨日から買付で北海道に…」 「そっか…」 彼はマスターがいないと聞くと、ホッとしたような、少し戸惑ったような表情を見せた。 「何か違うものにしますか?」 私が尋ねると、彼はさらに困った顔をした。 何かあったのだろうかと不安になっていると、私の表情に気づいた彼が意を決したように言った。 「じゃあ…。スプリッツアーを二つ下さい」
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