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すっかり落ち込んで廊下を歩いてたら、隣のクラスの男子が声を掛けてくれた。
「制服。見つかったんだな」
「あ、うん。もう、使えないっぽいけど」
力なく答えてから、あれ? と、思う。
「なら、直接に渡そうかな」
「え?」
彼はちょっと困ったような、照れたような顔で、私の手にメモと髪留めを握らせた。
「え?」
「ごめんな。制服、焦げたの俺のせいもあると思う。昨日、君たちが制服探してるの見てたからさ、腹が立って、今朝……入れたんだよ。自分のポケットに、花火。ほんと、ごめん」
彼はぺこりと頭を下げた。
私の心臓は、早鐘みたいに鳴りだして、呼吸まで苦しくなってくる。
「あっ……」
こんなの、生まれてはじめてだ。
なんで、こんなに緊張してんの?
「ポ、ポケットの人?」
彼は困ったように赤くなって頷く。
「ライン。してくれよな」
そう言って、早足で居なくなってしまった。
私の手には、クローバーの髪留めと彼のラインのメモが残され。
『返そうと思ってて、返しそこなってた。このヘアピン、君に似合うよ』
四角い字で、そう書いてあった。
ああ、なんかもう。
熱がでそう。
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