不思議なポケット

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 一応、先生に相談したら、生活指導の先生には話しておくから、明日はそのまま登校しなさいって言ってくれた。  私がへこんでると、  「きっと、明日が服装検査だからだよね。制服いじってる子が持ってちゃったんだよ!」  波ちゃんがそう言って私の代わりに怒ってくれた。 「酷いよね! 見つかって先生に怒られればいいんだ!」 「……うん」  「出てくるといいね、ブレザーってけっこう高いんだし」  私は力なく頷く。  へこんでるのは、違う理由うなんだけどさ。    ポケット。  繋がってたのは、ジャケットの左側だけだった。  もう……文通できないのかなって。  そう思うと、胸が塞がるみたいに落ち込む。  自分でもビックリするくらい、私はあの人との文通を楽しみにしてたんだな。  なんか、涙が出そうだった。  次の日の朝、校門前でちょっと騒ぎがあったらしい。女の子の制服が発火したとか、爆発したとか言ってた。 「おーい、山田。ちょっと職員室来い」  先生に呼ばれて職員室に行くと、無残に左ポケットの焦げたジャケットを渡された。 「ネームが山田だし、お前のじゃないのか?」  あぁ、サイズも、この使用感も私のだ。ただ、ポケットが……。 「やっぱり、制服を改造してた奴が持ってったみたいだ。厳重注意したけど、本人もポケットにネズミ花火を仕込まれて泣きじゃくってたからな。弁償させるか?」  ネズミ花火? 「いえ、大丈夫です。出てこないかもって思って、昨日、親に新しいの頼みました」  散々怒られ、嫌味を言われたが、まあ、買ってくれるって言ってたし。 「そうか。どうする? これ」 「一応、持って帰ります」  無残に焦げちゃったポケット。もう使えないんだろうなあ。
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