04 SIDE-L

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「おい、ロアン。誰だよ、そのよそ者は?」 背後から声をかけられた。 しまった。 もう一つの立ち去りたい理由がもう現れてしまった。 オーネストも唸り声をあげている。 「相変わらず、躾のなってない犬だな。 で、誰だよ、その犬よりも汚い身なりの奴は?」 こいつはクォク。この辺のcôn đồ(コンドー)つまりチンピラだ。 チンピラのくせに、朝からこのビーチを見廻りに来る厄介者。 鉢合わせしたくなかったんだけど、もう遅い。 後は、何とか穏便に済ますしか……。 クォクは、海水と砂でヨレヨレになったケンの奥襟を掴んだ。 倒れないように首を固定し、何発も顔面を殴るつもりだ。 拳が顔面に叩き込まれる。 ……ケンの拳がクォクの顔面に。 奥襟を掴まれた瞬間、ケンはするりと手をほどき、ノーモーションでパンチを見舞っていた。 驚くことに、ケンは一歩も動いていなかった。 ホワイトサンズからケンの足跡は微動だにせず、 代わりにクォクの足裏は砂を巻き上げ、尻餅を刻み込んだ。 「あ、悪い。反射的にやっちまった。まだやるかい?」 端から見れば、ラッキーパンチに見えたに違いない。 だが、やられたクォクは拳から受けた波動をキャッチしていた。 絶対的な強者の波動を。 つまり、一撃で戦意を喪失した訳だ。 「今日は……大目に見てやる……」 「あぁ、そうしてくれると助かるよ」 ケンは何事もなかったかのように、わたしの許に向かってきた。 徐々に熱を帯びてきた砂浜に足を引き摺りながらも。 「あ、あんなの相手にしちゃダメ」 「そうだな。悪かったよ」 「ただのcôn đồ(チンピラ)なんだから」
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