正しそうに見える前提

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 槌谷明日夏(つちやあすか)(小学4年生)は、少しばかり不機嫌だった。母に連れてこられたスーパーで、隣家に住む幼なじみの碇多恵(いかりたえ)と出くわした。自分は母親連れだったが、多恵の方は数人の友人と連れ立っている。  母親の買い物に着いてくるという事が、どうにも恥ずかしい事のように思えて、明日夏は不機嫌そうな顔を作っているうちに、本当に不機嫌になってきた。  折しも、バレンタインデーの季節、製菓コーナーでさざめくように笑い合う女子の集団にいる多恵は、楽しそうにしている。  別にその中に混ざりたいとは思わなかったが、自分といる時と違った様子の、はしゃいでいる様子が、自分とは異なる、『女子』なんだなあ、と、実感させられて、どことなく居心地が悪かった。
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