正しそうに見える前提

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 小学生のバレンタインデーは、あらかじめ釘を指すように、『学校にお菓子を持ってきてはいけません』という、教師の牽制で始まる。  毎年の事だし、どうせ母と姉から『義理』というか、お前ら単にそれチョコレート売り場に行きたかっただけだよね? な、本人用チョコレートのおこぼれを少々もらうだけの日になっている。  だいたい、俺、チョコそんなに好きじゃないし。  明日夏はそう思いながら、集団下校の列に従ってぼんやり歩いていた。折悪く、多恵はピアノの日で、学校敷地内にあるピアノ教室へ行き、列にはいない。 「あーあ」  そこに多恵が居ない事がわかっていながら、明日夏はため息をついて、隣家の門を一瞥し、帰宅した。
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