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「君が好きではない。」
神経質そうな先輩は、目をすがめて、はっきりといった。
夕日によってオレンジ色に染まった図書室。
先輩と俺の二人っきり。
告白するには最高のロケーション、だと思ったんだが。
「……いやにはっきりいいますね。」
告白して振られる、それはきっと当たり前のことだ。
でも俺の告白も、この人の胸中をなにも揺さぶることはなかったっていうのは。
ちょっと、いやかなりきついことだ。
震える声でそう絞り出すと、先輩はほんの少し顔を歪めた。
「……君が悪いわけではないよ。私の問題だから。」
そういって本当に申し訳なさそうな顔をするものだから、俺は何も言えなくなった。
好きな人に、そんな顔をさせるために告白したわけじゃない。
俺はいつも、図書室のカウンターで静かに本を読んでいるこの人の横顔が好きだった。
……偏差値の低いこの高校では、図書室を利用する生徒など皆無に等しい。
俺だって図書室に来たのは、図書委員にさせられたからだ。
委員会にでてそれ以降は別にバッくれたってよかった。
でも図書委員のこの人が読んでた本が、俺が昔読んだことがあった本で。
気まぐれでそのことについて話したら、
仏頂面のこの人の顔が、ちょっとはにかみながら笑って。
「……初めてだよこの本を読んでいる人に出会ったのは。私もこの本が好きなんだ。」
俺は別にその本が好きだなんて一言も、と思ったけれど。
その顔を見ていてたら、俺はなにもいえなくなってしまっていたんだ。
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