301人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
「落ち着きなさい。私がαというのは嘘ですよ。香水です。私はβなんです」
「なんで……そんなこと……?」
「旦那様からの指示です」
「え?」
「ルシアン様と結婚されるならば、ルシアン様を一番に思いやれる人間でないとだめだと昔から言われていたのです」
スティーヴによるとこうだ。何度も幸輝の気持ちを試したのは、ルシアンを本当に大切にしてくれるかどうかを見極めるためだったと説明される。今まで莫大な資産とΩという稀少さから目をつけられたことは数えきれない。ルシアンが生まれた頃から、愛でていたほど大切だったからこそ、幸輝が相応しいかどうかチェックしていたようだ。
「ルシアンの手紙は……?」
「こちらです」
胸ポケットから封筒を差し出される。幸輝は素直に受けとると、開くことなくジーンズのうしろポケットに納めた。
「それでも俺はあなたを許せません」
「……幸輝。実は、今通っている大学を奨めてくれたのは、他でもないスティーヴなんだ」
「……どういうことだ?」
「本当は別の大学に進学しようとパンフレットを取り寄せていたのに、スティーヴが、今の大学の方が絶対にためになるからと譲らなかったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!