第二話

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 サンドイッチのお礼に麒麟は洗面所に溜まっていた洗濯物を片付け、洗い終えた服を昨日教わったウッドデッキの竿に全て干し終えてから、ずっと作業音が途切れることのない工房の扉をそろりと開けた。  作業に集中しきっているのか、熊谷は初めて見たときと同じようにゴーグルを着け、バーナーの前に立って絶え間なく手を動かしていた。どうやら麒麟が扉を開けたことにも、気付いていないようだ。  ゴーグル越しにもわかる真剣な眼差しに、麒麟もついその姿に見惚れてしまう。  炎に炙られて真っ赤になったガラスの筒に時折空気を吹き込み、熊谷は自由自在に形を作り上げていく。最初はただの棒状だったガラスは、あっという間にカップの形になった。  カップが完成するや否や、今度は熊谷は作業台の上に数十本…もしかしたら数百本は立っているかもしれない細い色つきのガラス棒を何本か手に取り、それもまた、炎の上でくるくると回しながら、どんどんと形にしていく。  時には見ているこっちが息を止めたくなるほど、細かい作業を交えつつ、完成したのは小さなキリンだった。親指の先ほどのサイズなのに、手足は勿論、耳や尻尾もあれば、身体の模様までちゃんと入っている。  最後に先ほど作ったガラスのマグカップの持ち手の上に、作ったキリンを接着して、熊谷は満足そうに口端を持ち上げた。 「……凄い」     
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