第一話

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 だからこそ、麒麟はそんな『第二の性』に囚われない生活を求めて、家を出てきた。Ωだ、αだ、なんていうのはもううんざりだった。 「ん……? でもお前、両親とも居ないのに家出ってのは、親戚か誰かと暮らしてたのか?」 「いや……義理の父親。俺が小学校に上がったときに母親が結婚した相手で……一流企業に勤めてるエリートα」 「結婚……番ったのか?」 「番じゃなかった。αとΩだったのに何で番わないんだろうと思ったけど、それがわからないまま、結婚して一年後に母親が死んだんだ」 「おいおい待てよ。結婚してたった一年でお前の母親は亡くなって、お前はその結婚相手が嫌で家出してきたってことは……まさかサスペンス的な事情じゃねぇだろうな」 「サスペンス的な事情ってなに……。母親は、病死だったよ。死因は感染症だって。義父も、母親にも俺にも、凄く良くしてくれてた。ずっと貧しかった俺たち親子には信じられないくらいの豪邸に住まわせてくれたし、俺もちゃんと学校に通えたし」  Ωは生まれ育ちによっては、まともな教育すら受けられないケースも少なくない。そんな中、丁度小学校に上がるタイミングで母が義父と結婚し、義父のお陰で麒麟は人間関係はさておき、教育だけはまともに受けることが出来た。  立派な住まいも与えて貰えたし、そのことには本当に感謝している。     
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