第八話

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 例え確かめようがなくても、単なる偶然だったとしても、熊谷との出会いが麒麟の人生を大きく変えてくれたことは間違いない。熊谷の隣に居られる幸せがあれば、この先何があっても乗り越えられる気がした。  運命が何かあんのか?、と熊谷が首を傾げたタイミングで、会計から名前を呼ばれた。内緒、と笑って先に席を立った麒麟の後ろで、熊谷が拗ねたような顔で舌打ちする。  そして病院からの帰り道。熊谷の車が住宅地から農道へと差し掛かったところで、麒麟は気になっていた質問を思い切ってぶつけてみた。 「熊谷さん。……さっき月村先生が言ってた話って、ホント?」 「どの話だ?」 「その……酔い潰れて……ブラ────って、うわっ!」  麒麟が言い終わる前に、突然車が大きく蛇行した。反動で大きく身体が傾いで、麒麟は熊谷の肩にこめかみをぶつけた。 「ちょ、熊谷さ……っ!」  顔を上げた途端、今度は反対側にまた大きく車がフラつく。咄嗟に熊谷の二の腕にしがみついた麒麟は、わざと熊谷が無言のまま蛇行運転していることに気が付いた。その横顔は、不貞腐れたような顰め面だった。 「ご、ゴメン! もう聞かないから、真っ直ぐ走って熊谷さん……!」  縋るように叫ぶ麒麟を無視して、熊谷の車は田んぼに落ちるギリギリのラインをぐねぐねと何度も蛇行しながら走っていく。     
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