第二話

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 発情期を迎えてしまったら、義父は一体何をするつもりなのだろう。  自分は一体どうなるのだろう。  込み上げる不安を持て余したままの麒麟に反して、義父は翌日にはもういつも通りの優しい父親に戻っていて、麒麟は益々わけがわからなくなった。悪い夢でも見たのではと何度も自分に言い聞かせようとしたが、父に撫でられた感触が、肌のあちこちにハッキリと残っていた。  ────このまま、義父の元には居られない。  とにかくそう思った麒麟は、それから本やネットで片っ端からΩの発情期について調べ、そうして辿り着いたサイトで販売されていた、強い発情抑制剤に手を出すようになった。  その薬は頭痛や吐き気の副作用が市販の薬よりもかなり強く、義父に隠れて何度もこっそりトイレで吐きながらも、麒麟は薬を飲んでいることを義父に気付かれないよう、必死で誤魔化してきた。  そうしてどうにか、発情期を迎えることなく家を出られて、幸いにもΩの麒麟と対等に接してくれる熊谷に出会い、有難いことに熊谷の小屋に居候させて貰えることになった。     
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