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窺うような視線を向けると、熊谷は少し困ったような顔で項を掻いてから、「いや」と緩く首を振った。本当に嘘が吐けない人なんだ、と麒麟は密かに苦笑する。
「起きる瞬間、『嫌だ』って叫んだ以外は、ずっと苦しそうに呻いてた」
そっか、とだけ答えて、麒麟は湯気の立ち昇るホットミルクを一口啜った。
多分、熊谷は麒麟が悪夢にうなされている間、何かを聞いたのだろう。けれど特にそれを追求しようとしない優しさが、ホットミルクの優しい甘さと相まって、泣きそうになるのを麒麟は必死で堪えた。
「そうだ。眠れねぇなら、いいモン持ってきてやる」
熊谷が、不意に明るい声を上げて立ち上がった。そのまま工房へ入っていくと、白くてモコモコとした謎の塊を手に戻ってきた。
「寝つきの悪いガキにはぬいぐるみだろ」
そう言って渡されたそれは、目と鼻が縫い付けられているので何かの動物なのだろうということはわかったが、何せ形がいびつで、何の動物なのかまではわからなかった。
「……コレ、なに? ……ブタ?」
色んな角度から眺める麒麟に、熊谷が「ああ?」と不服そうに片眉を吊り上げる。
「失礼なヤツだな。どう見てもウサギだろうが」
「う、ウサギ……?」
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