第二話

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 母は敢えてそうすることで麒麟を育ててくれていたので、行為自体を否定するつもりはないし、実際に身体を売り物にしている他のΩを非難するつもりもない。  しかし、結局麒麟の母は若くして亡くなってしまった。  人生の中で、発情期の度に複数のαや時にはβとも肉体関係をもつΩは、その中で感染症にかかってしまうケースも少なくない。麒麟の母の病気もそうだったのか、母も義父も「感染症」としか教えてくれなかったのでわからないが、母が麒麟に託してくれた通帳は、今の麒麟には「Ωという性に縛られるな」という母からのメッセージだったような気がした。  だから麒麟は、Ωだからという、ただそれだけの理由で、容易く身体を投げ出すような人間には、なりたくなかった。  無意識に抑制剤の入った薬瓶を握り締めていた麒麟は、一度は閉めた蓋をもう一度開け、いつもは一日三錠服用する錠剤を、追加で更にもう三錠、水で流し込んだ。     
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