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カップだけだと無機質だったのが、キリンが一頭くっついたことで、一気に温かみのあるマグカップに変わる瞬間を目の当たりにした麒麟が思わずポツリと漏らした感想に、熊谷は驚いた様子でやっと麒麟の方を振り返った。
「おお。なんだ、居たのか」
「なんか集中してたから、邪魔すると悪いと思って。……昨日も、邪魔したとこだから」
少し罰が悪そうに言った麒麟に、熊谷はバーナーの火を止めてゴーグルを外すと、「気にすんな」と笑った。
「昨夜は、あれからちゃんと眠れたか?」
「うん、ブタウサのお陰でむしろ寝すぎた」
「だからブタじゃねぇって」
「あ、サンドイッチもご馳走様。代わりに、洗濯済ませといた」
「ああ、そういやすっかり忘れちまってた。ありがとな」
苦笑する熊谷に「どういたしまして」と返して、麒麟は改めて今しがた完成したばかりのキリンのマグカップをまじまじと眺める。
「凄いな……こんな小っさいのに、ちゃんと目も綺麗に左右対称になってる。あの謎のウサギ作った人とは思えない」
「人間、向き不向きっつーのがあんだよ」
「でも、なんでキリン? 可愛いけど」
「……何となく、お前見てたら作りたくなってな」
「いやだから、俺の名前は動物のキリンじゃないって」
「音は同じなんだからいいじゃねぇか。それに、俺はお前の名前、好きだぞ」
「え?」
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