第一話

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 行ってみて何もなければ神社に駆け込むという手段も、使えるか否かはともかくまだ残されているのだから、取り敢えず可能性にかけてみようと、麒麟は残された轍を辿って坂道を上り始めた。  ……十五分。  ……三十分。  もうそこそこ坂を上がってきたはずなのだが、ウネウネと蛇行しながら山林へと続く道の先は、まだ見えてこない。それどころか、道幅は徐々に狭くなり、最早車一台がどうにか通れる程度にまで狭くなっている。  そんな中、タイヤ痕は森の中へと続いていた。 (ホントにこの先に何かあるのか……?)  いよいよ道は木々に囲まれた山林へと差し掛かり、麒麟の不安も段々大きくなる。肩から提げたボストンバッグも、これだけ坂を上り続けているとまるで岩でも背負っているように重く感じた。  ……あともう少し進んで何もなかったら引き返そう。  そう決意して、すっかり山道になった草木の生い茂る坂道を五百mほど進んだとき。ようやく道の先に、一軒の小屋が見えてきた。  森の中にポツンと建つその小屋の脇には、黒い軽自動車が一台停車している。恐らくこの轍はあの車のものだと麒麟は察したが、同時に少しガッカリもした。  目の前の小屋は、とてもペンションといった雰囲気じゃない。  どちらかと言うと、雪山で遭難したとき、ドラマや漫画なんかで都合良く見つかる山小屋に近かった。     
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