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──【青い炎】が上がった。その広間にいる全員が目を見張って息を飲んだ。
天秤の【青い炎】は【黒の海】へ落ちることを表している。要するに、生きても帰れぬ死んでも帰れぬ海に連れていかれるというのは永遠の別れを意味する。
「ミーシャ!!」
叫んだのは陸に残る側にいたアエルだった。ミーシャはその声で現実に戻るがその瞬間、どこからともなく現れた黒いマントを羽織った軍人によってミーシャは小さな可動式の牢に入れられてしまった。
「大丈夫だよ!」
アエルはミーシャを追おうとするが、軍人に止められている。ミーシャはそういってアエルたちに笑いながら、奥の重そうな小さな扉につれていかれた。
「アエル、落ち着いて!あんたも落ちちゃミーシャが泣くわよ!」
「そうだよ、落ち着いて!」
ミーシャが消えていったドアの方に向かって叫んでいるアエルをユリアとノイリーが抑えている。彼女たちはその場では冷静だった。アエルはその場で崩れた。
それでも裁判は続く。目の前で落ちる人間を見た残った判決待ちの10人はガクガクと震えて涙を浮かべている。無理もない。落ちる恐怖を思い知らされる。先頭を歩いていたその人は次々と無機質に子供たちの名前を読んでいく。皆震えていたが無事赤い炎が上がっていき、安堵から泣き出したりその場で崩れる者が相次いだ。そして最後の一人。日は沈みかけている。
「リィラ!」
彼女は恐れていることを悟られまいと堂々と前に出る。背後から夕日のオレンジの光がリィラを照らす。皆固唾を呑んで最後の【判決】が下る瞬間を待っている。リィラも天秤の炎を見つめている。炎が豪快に燃え上がった。
「ひっ...」
【青い炎】が豪快に燃え上がったのだ。その瞬間に短い悲鳴をあげたリィラだったが、すぐに金切り声で叫んだ。
「なんで私なのぉーーーー!!!私はあいつと違う!!!!」
キィーキィーとリィラは騒いだ。マントを羽織った軍人がリィラを抑えて同じく小さな牢にいれてまた重く小さな扉の奥に連れていった。リィラの叫び声は扉がしまった瞬間に消えて、広間がシンッとする。
「以上、閉廷。」
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