二章

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 あいつは俺を目に入れて泣きそうな表情を浮かべた。どうせ、なし崩し的に最後までヤられたんだろ。  金が欲しいんだろ。なら、そのぐらい耐えろ。  俺はこれまで以上に雑用係にきつく当たった。食料を奪ったり、わざと置いて行こうとしたり。それでも俺が一言でも声をかければ、しっぽを振ってくるあいつ。酷く虚しい。  魔王領に一人放り出してやろうか。ふつふつとそんな考えが湧いてくる。そんなことをすれば、どうなるかなど言わずもがな。死なれでもしたら、夢見が悪いと言い訳し、あいつがはぐれていないか魔力探知し確認する。この訳の分からない感情にも苛立ちを覚えた。  魔王の城に乗り込む直前の夜。  女達は感傷的になり、ため息ばかりを吐いていた。俺とのセックスにハマっちまって離れたくないらしい。まじでエロゲかよ。  そんな女達に、(別れた)女がいる、必ず元の世界に戻る、とずっと聞かせてきた。やっぱクズいな、俺。    城に入ってからは、無言のまま突き進んだ。各階毎にいる中ボスを片づけ、城の最上階まで到達する。  ひときわ広い部屋にたどり着いた。そこは玉座の間だった。玉座には黒い靄のようなものが人の形を模り、腰かけていた。    こいつを倒せば、全て終わる。       
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