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ベルネの背中が床に叩きつけられる直前に腕を滑り込ませ、抱き留める。胸から腹にかけて、黒い靄を纏うクリスタルのようなものが深々とめり込んでいた。
ベルネがそれを受けたのは、俺の立っていた場所と玉座を結んだ直線上。
なんで?
なんでだ?
なんで、助けた?
焦点の合わない瞳で俺を捕らえ、ベルネの唇がわずかに動く。それは言葉を発する前に血を溢れさせた。
「こッの…バカヤロウが…っ…!」
金のためだったんだろ?!
報酬のために俺の機嫌取ってたんだろ?!
なんで俺なんかを…!
ピクリとわずかに持ち上がったその震える手を取り握ると、ベルネは――幸せそうに微笑んだ。
俺は、間違いを犯した。
こいつは。ベルネは…――。
目が、喉が、胸が灼ける。感情が溢れてきそうになる。その時、やっと自分の感情に気づいた。
ベルネの血で濡れる唇に口づける。何の抵抗もなかった。
死なせない。死んだとしても、生き返らせる。
持てるすべての力を使って。
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