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――が、タケルも恩田も不思議そうな顔をするだけ。
オレは怖々もう一度、大木の辺りを見つめてみたが…
何もない。
誰もいない。
そうこうしているうちに、車はどんどん先へ進む。
オレの見間違いか――?
確かに、何か白い顔のようなものを見た気がしたのに…。
「情けない奴だ。怖い怖いと思ってるから幻を見るんだ」
ムッ!
相変わらず人を小バカにしたように毒を吐く高支那。
「気にするな」
そう言ってくれたのはタケル。
つまり、高支那の言ったことなど気にするな――と援護してくれたわけだ。
やっぱりタケルって優しいィー。
そして――
暗い森を抜け、オレ達がやって来たのは…
古びた温泉旅館。
建物は料亭風で趣はあるが、鬱蒼とした木々に覆われ、なんとも古めかしい。
まるで妖怪の巣窟って感じ?
それから駐車場らしき広い場所に車は停まり、オレ達はこの地に降り立った。
さあ!
これから何が起こるのか?
わくわくする期待感と、どことなく嫌な予感がする不安感を胸に抱きつつ、オレは大きく一つ、深呼吸をするのだった。
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