4 旅館の主

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オレは車内の気まずい雰囲気から逃れるように窓の外を眺めた。 いつの間にかビル郡の街並みから民家の町並みへ。 民家の町並みから田園地帯へ。 田園地帯から木々が乱立する自然の風景へ。 そして、のどかな自然から山深い森の中へ… 森の中… ええーーーーーっ!!! な、なんか、おどろおどろしい世界へ来たような感じだぞぉ。 こんな山ん中に、ホントに温泉旅館なんかあるのか??? 人っ子一人いない木々の中の舗装されてない道を、不似合いな車が走り抜ける。 なんだかなぁ…って感じ? まだ時間にしたら昼前だ。 なのに、鬱蒼と茂った大木のせいか、昼間でも辺りは薄暗い。 オレが世の中で一番怖いものは―― 実はおばけだったりする。 ほら。 今にもそこらの木の陰から幽霊が顔でも覗かせて… 「ヒッ!!!」 オレは固まった。 「どうしたんだ、克巳?変な声出して。…お前、顔が真っ青だぞ」 タケルが心配して声をかけてくれるが、オレは、オレは―― …見ちまった。 「い、今そこに、ゆ、幽霊が…!!!」 オレは震える指で、ある一本の大木を指し、震える声で言葉を絞り出した。
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