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さっそく旅館の玄関口へと向かうオレたち。
――が、やはり違和感は尽きない。
なぜなら、なんだかこの辺り一帯、人の気配がまったくしないからだ。
つまり、他の客が誰もいない。
車も、オレたちが乗ってきたのが一台あるだけ。
まるで、深い森の中に、オレたちだけが捕われた…そんな感じ?
まあ、怖がりのオレだからそう感じたのかもしれねぇけど。
「克巳、何してんだ?行くぞ」
タケルの声に促され、立ち止まっていたオレは慌てて駆け出す。
それから威厳のある門を抜け、格子戸の玄関を開けると――
「いらっしゃいませ」
すぐに涼やかな男の声が降ってきた。
そこに待っていたのは、紺色の落ち着いた着物を着こなした――これまた美形。
う~ん。
歳は…恩田と同じぐらい?
いやに白い顔をした奴だ。
――あっ!
白い顔といえば、さっき森の中で見たあの幽霊らしき影…!
まさか――!?
オレはマジマジと目の前の男を確認した。
「私はここの主、三影千早(ミカゲチハヤ)と申します」
男は清楚に告げる。
ただ…気になったのは、奴がタケルを執拗に見つめていたこと…。
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