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「お待ちしていましたよ」
旅館の主――三影千早はうっすらと笑みを零した。
肩までのサラリと揺れる柔らかそうな髪が、どこかなまめかしい。
そして主はこれからすぐに部屋に案内してくれると言う。
――って、ここには仲居さんっていないのか?
客どころか、従業員の姿さえ一人も見えないぞ。
なんか怪しい…。
ま、でもそんな事より、オレは今、あることで頭の中がいっぱいなんだ。
それは部屋割り!
車の中では、高支那の一方的な発言により、タケルと高支那が同室って事になったけど、それをただ大人しく見守るほど、オレはバカじゃねぇ。
タケルと高支那を2人きりになんかさせるもんか。
オレと恩田でタケルたちの部屋に押しかけて、朝までドンチャン騒ぎしてやる!
そうすれば2人きりになる事もねぇし。
オレって頭イイー。
そんな計画を着々と頭の中に構築していたオレは、今は黙って奴――三影千早の案内に従う。
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