4 旅館の主

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長い板張りの廊下を歩いていると、まるでどこかのお屋敷に招かれたような感じだ。 歩く度にギシギシ音が鳴るところが、なんか不気味…。 部屋数はあまりなく、オレたちが案内されたところは、離れのようになっていた。 風が吹き抜ける廊下を渡った先にある建物だ。 オレはこの時思ったね。 この旅館はあまり流行ってねぇな、と。 夏休みだというのに、この閑散さ。 そのことを直接三影千早に聞けば、やはり泊まり客はオレたちだけだと言う。 まあ、こんな山奥までやって来るのは、招待券をもらった奴――つまり、オレたちぐらいなものかもしれねぇ。 招待券っていうのも、ひょとしたら客寄せのためか? 真夏だというのに、この地は少しひんやりとしていた。 そして―― 部屋の前まで来ると、三影千早は高支那と恩田にそれぞれルームキーを渡した。 高支那とタケルの部屋は――幻の間(ゲンノマ)。 恩田とオレの部屋は――妖の間(ヨウノマ)。 なんつー奇妙なネーミングだ。
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