5 気をつけろ!

3/3
307人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
一方―― こちらは克巳の部屋とは少し離れた、タケルと高支那の部屋――幻の間。 静まり返った室内に不意に高支那の声が響く。 「鬼頭」 呼ばれて、畳の上に座っていたタケルはスッと顔を上げた。 高支那は深い緑が広がる大きな窓の外を、籐の椅子に腰掛け見つめていた。 こちらに顔を向けることなく、続けて言う。 「ここでは一人になるな」 それはタケルにとって、なんとも不可解な言葉だった。 タケルは一瞬怪訝な顔をする。 一体どういう意味なのか、その真意を計りかねているようだった。 「どういう意味だよ」 タケルが問いかけると、高支那はその時初めてタケルの方に向き直った。 そしてもう一度、改めて口にするのだった。 「ここでは絶対一人きりになるな。いいな」 高支那の顔は怖いぐらい冷めていた。 普段の冷たさにさらに輪をかけた感じだ。 高支那は真っ直ぐタケルを見つめ… その視線に思わず目を逸らしてしまうタケル。 ――しばらくの沈黙。 気まずい空気が流れる中、高支那が突然立ち上がった。 タケルは反射的にビクッとする。 その時―― 「タケルー!!!」 克巳がいきなり部屋に入って来た。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!